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そのメイド喫茶は、狭い、猫の額ほどの土地に建てられたビルの5階に店を構えていた。
部屋の中に窓は一切無く、限り無く脱出しづらい、密室。
テーブルやソファ…調度品はメイドに劣らず安物で、高校の学園祭レベルといっても差し支えない。
だが、僕もアウさんもらびっとさんも鉄ちゃんも、メイド初体験だったので相場というものを知らず、ここがどの程度のランクの店か、判断がつかなかった。

ソファに座るよう促され、僕達は間にメイドが入れるように間隔を開けて席につく。
しばらくすると、虫がわくようにどこからかメイドが4,5人現れ、
僕達の前に整然と並びだす。
わけもわからず僕達が慌てふためいていると、
「では、今から歓迎の踊りをさせていただきますぅ」
と、連中が甘ったるい声色を奏でた。
間髪入れず、彼女達は脳が腐っていなければとても吐けない痛々しい歌詞を紡ぎながら、奇妙なダンスを踊りだす。
歌詞から判断するに歓迎されているらしいが、
彼女達の奇怪な言動を見ているだけで精神が削り取られる。
とても直視できない。

視界の端に写る、他の皆の様子を探ってみると……

アウさんは、普段の快活な笑顔をどこに置いてきたのだろうか…
何者をも寄せ付けないアンニュイな表情を顔に貼り付けていた。
第一話の、犯人に興味を亡くした後のネウロみたいな、あんな顔だ。

らびっとさんは、こういう状況にもしかしたら慣れているのか
苦々しく笑いながらも、愛想をなんとか取り繕おうとしていた。

鉄っちゃんは刺すような視線で、まるで値踏みするかのように、
フリルをひらめかせ舞い踊る奇妙な生き物を睨んでいた。

僕はいつ誰が飛び出して目の前の生き物を殴打するか、
期待しながら、そっと様子を見守っていた。



残念なことに、誰も動きを見せず、奴等の奇怪な舞踊は終わった。
そのまま流れるように、彼女達は店の各所に散っていく。

何人かは、僕達の間に陣取り、
「メニューはぁ、こちらになりますぅ。ご主人様」
…と如才なく接客モードに入っていた。

僕と、隣に座っていた鉄っちゃんは揃ってメニュー表に視線を下ろした。
まず、メイド喫茶の定番…オムライス、900円が目に入った。
オムライスとしては若干高めだが、この程度割高なのは予想していたこと、
別段驚きもしなかった。
とはいえ、味がさほどうまくないのも簡単に予想できたため、
僕と鉄っちゃんは無難にケーキを頼んだ。

これは正解だった。アウさんとらびっとさんは無警戒にもオムライスを選んだのだが、その息が詰まりそうな表情、そして無惨にも食べ残され、散らかった赤いライスが、その味を物語っていた。
一方、ケーキは特に大したこと無かったが普通にケーキだった。



それぞれ一通り注文した料理に手をつけると、
メイドと名乗る奇妙な生き物に、更にコースの選択を迫られた。
料理と同じメニュー表に記載されており、

■たのしくお喋りコース 1500円
■たのしくカードゲーム 1500円
■耳掃除        2000円

…というラインナップだった。
「この耳掃除って…どう考えても地雷ですよね」
「…だな。なんだかんだで言いがかりつけられて余分な金をせしめられそうな気配がぷんぷんするぜ…!」
「とはいえ、僕達特にこのメイド達と話すことないですよね」
「…そもそも接客態度最悪だしね。…なんで今同僚同士で、業務連絡交換してるんだよ。」

…というわけで、無難(と判断した)カードゲームコースを選ぶ。
…だが、既に僕達は罠に嵌っていたのだ。
二重三重に張り巡らされた、料金搾取の罠…
もし、この時見抜けていれば、僕達はまだ助かっていたのかもしれない…。
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