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いつの間にか日は落ち、あたりは暗くなっていた。
雨もだんだんとひどくなってくる。
寸断無くフロントガラスを叩き、小気味良い雨音を奏でていた。

山道は細く曲がりくねっている。
既に街から山に入って30分…。
山陰に入ったせいか、妙に風景が陰気になってきた感じがする。
この暗くしげった木立ちの奥で、誰かが死体を埋めるために穴を掘っている…そんなことを想像させる、暗く飲み込まれそうな山間の闇だった。

僕は全身の力を抜き、シートにもたれかかった。
慣れないパチンコ梯子で、身体の芯に疲れが溜まっていたのだ。
ふと運転席を除き見ると、アウさんがニヤニヤと口角を歪ませながら、
ハンドルを固く握っている。
その顔には疲労の色は見えない。
いつも皆にまったくアウさんはこれだから…と揶揄されているが、
実際のアウさんは、頼りになる男だ。
横目でじっと、つい見つめてしまった。

「もうすぐよ着きますよ、コゲさん」
その目線に気付いたのか否か、アウさんがそっと声を立てた。
あたりを見回すと、明かりはほとんどない。
完全な山奥だ。
車のヘッドライトが壊れれば、
間違いなくガードレールを突っ切って、崖から落ちるだろう。
こんな所に……人が住んでいる所があるのだろうか。
僕はその疑念を振り払うことはできなかった。

だが、しばらくすると、山の斜線の向こうに小さな明かりが揺れて見えた。
それも1つではない。
いくつかの淡い光が折り重なり、まるでその区画自らが光っているかのようだった。

「こんな山奥に住宅街が…あるだと…」
僕は呻くようにつぶやいた。
アウさんは、慣れた手付きでクラッチを切り、速度を落としてから、狭い路地を潜り抜けていく。
窓の外を流れていく家々に驚いていると、
「着きましたよ」
と、アウさんが声をかけた。

視線をめぐらせると、そこはたしかに……以前写真で見た家だった。
猫脱獄防止用の白い柵、庭に陣取るログハウス。
だが、写真に写されていたそれはあくまで一部だったようだ。
本体は、まぎれもなく近代住宅の一軒屋……西洋風の落ち着きのある外観デザインだ。
外装は目立つような汚れもなく、おそらく建てられて10年も経っていないだろう。

小ぶりの門を潜り抜け、オーク調のシックな扉の前に立つ。
ここが、猫の泣く街…カサンドラ。
過去10年、誰も到達したことのない、禁断の地。
僕は万感の思いを篭めて、その扉をくぐった。

そして、僕を迎えたのは、トタトタと軽快な足音を立てて迫り来る猫――
かつて神剣の名を与えられし猫・マロチだった。
 
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