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その爪には、けばけばしいネイルアートが施されていた。
ラメがふんだんにちりばめられ、毒々しい光沢を放っている。
あの爪には…神経毒が含まれている…ッと怯えるアウさんをよそに、
場は沸き立ち、その毒爪メイドはカードゲームの準備を滞りなく進めている。

リビングガラステーブルの上に、7つの山――参加者の数だけ、軽快に伏せられていくカード。
卓を囲み居流れる我々とメイド達は、ぎこちない談話をこなしつつも、
さりげなく配られたカードに視線を注いでいる。
特に、メイド共は化粧で隠しているつもりだろうが、
まるでカードの表面が焦げ付きそうなぐらいの、激しい目線を送っている。
…それもやむをえないだろう。
なにせ、これは実質、金のかかったゲーム……
知略長け、他者を出し抜くものが勝つ戦場なのだから――。



さきほど、メイド提示してきたカードゲームの種目、それは、大貧民だった。
学生時代誰もがやっただろう、強いカードで場を切り流し、主導権を握り、
最初にカードを使い切ったヤツが勝ちという、先行逃げ切り型のゲームだ。
こんなものでも、特に共通の話題がない場の潤滑剤にはなるだろう。
そんなことを思っていると、ただの余興ではつまらぬと、メイド達がある条件を提示してきた。

「ご主人様達が勝ったらぁ…私達と一緒に写真を撮れる権利をあげますぅ。
 でもぉ、私達が勝ったら…ちょっとしたお願いを聞いてもらいますぅ。」

「ご主人様達って事は…チーム戦…ということか?」

「はい。なかなかご理解が早いですぅ。最後に残った一人がご主人様方の誰かなら、私達の勝ち。
 最後に残った一人が私達メイドの中の誰かなら、ご主人様達の勝ち、という具合ですぅ。」

「なるほど…いいでしょう。」

この時…ちょっとしたお願い、の内容をしっかり聞いておかなかったのは僕達のミスかもしれない。
しかし、日々マージャンで勝負勘を鍛えている我々に、敗北はないという驕りがあったのだから致し方なかったのだ。



…そういうわけで、今に至る。
カードはキチンと人数分の山に配り終えられ、それぞれがこぞってお目当ての山を机から剥ぎ取る。
この時、カードに対してふと言い知れぬ違和感を感じたのだが、その場は、
ただ慣れない場所でのゲームだからだろう、とさほど気にはしていなかった。

僕が選んだカードセットは…正直、微妙だった。
2やJOKERの、切り札と呼べるカードは一切無く、トップ上がりは諦めざるをえない手札だった。
…とはいえ、このゲームはチーム戦。
要は、ビリにさえならなければいいのだ。
他のメンバーのカードが良ければ、さほど問題ではないだろう。
そう考え、思案するふりをしながら、皆の顔色を伺ってみると…
どうも、鉄っちゃんの表情が芳しくない。
苦虫を噛み潰したように、頬をゆがめている。
「…配牌、悪いのかね鉄っちゃん」
「ええ、これは、ムリです…」
諦観の念を隠そうともしない。
これは、僕の聞き方も悪かったのだろう。
だが…なんというか、更に悪いことに、
…その言葉を聞いて、メイド共が嗤った気がしたのだ。
そこで、彼女達の表情を冷静に観察していれば、気付けたかもしれない。
それが、”鉄っちゃんのヒキの悪さを笑った”のではなく、”勝ちを確信したゆるい嘲け笑い”であったことに。


その予感が当たったのか、ゲームは終始メイド共のぺースで進んだ。
アウさんやらびっとさんが強気にKやAで場を流そうとしても、すぐさまそれを蹂躙するかのように、
2やJOKERが飛び交い、主導権をもっていかれてしまう。
「ぐっ…ナゼダ。ナゼそこで切ってくる…!」
まあ、チーム戦なら相手方の攻勢をつぶすのは常套手段だが…それにしては、
こいつら、”強いカードを持ちすぎている”。
今回のルールでは、”縛り”や”階段”などのローカルルールが無いため、
3,4,5…といったローカードの処分が非常にしづらい。
そして、ナゼか”8切り”だけがルールとして残っているので…
普段よりも2や8の威力が大きい。
正直、ハイカードや8を取り揃えたプレイヤーへの対抗手段はないと言って良いだろう。


そこにきて、このメイド達の手札の豪華さである。
奴等は惜しげもなくハイカードで押しつぶそうとしてくる。
その暴風のようなメイドの攻勢に、なす術もなく僕達は敗れた。
しかも、最後に残ったのが僕と鉄っちゃん…どちらも客組という、
どうしようもないほどの負けっぷりだ。


「もう一度…やりますぅ?」
打ちひしがれる僕達の様子を見て、哀れむような声で、メイドが提案してきた。
「やらいでか!!11」
すぐさま応と叫び、了承する。

だが、その後も1ゲーム目とほぼ同様の展開で、
メイド共は2、8で場を容赦無く切り裂き、颯爽と上がっていく。
またも圧敗。
流石に、アウさんもこの異変に気付いたようで、不審気な眼でメイド共を睨んでいた。


僕は、すぐさまジェスチャーで、アウさんにイカサマの確認を取る。
だが、アウさんには伝わっていなかったうようで、とぼけた表情で宙を仰ぐのみだった。
きっと、またマロチのことでも考えているのだろう。アウさんの猫脳!!



…仕方なく、僕は単独で奴等のイカサマを暴こうとした。

まず考えられるのは、”ガン札”……
すなわちカードの裏面の傷・汚れ・微妙な差異で、そのスーツ・数値をメイド共は判別しているという可能性だ。
だが、そもそもそれを防ぐために、1ゲーム目から、
配られた山札を常に僕が最初に取れるように構えていたのだ。
さらに、取る山も自分に一番近いものでなく、配ったメイドの前のものを取るようにしていた。
メイドが、カード配りの時に、自分の所にいいカードを集める可能性を疑っていたからだ。

…しかし、実際はさきほど伝えた通り、手札は微妙と言うしかないものだった。
この結果から、配っていたメイドが、意図的にカードを選別していた可能性は…ほぼないと思われる。


では、他の方法は?
…新たに逡巡しようとした刹那、今しがた配られた3ゲーム目のカードの山が、視界に飛び込んできた。
1ゲーム目からまとわりついていた違和感が、再び首をもたげる。
今度はその感覚を真摯に受け止め、目を凝らして見極めようとした。

そして、次の瞬間。
メイド達が山に手を伸ばした時…コゲに電撃走る…!!
「…そうか。そういうことだったのか」
搾り出すように、自分達の愚かさを呪うように呟いた。

甘ったるい声を吐くわりに…随分えげつない手を使うじゃあないかメイド共め。
心中で唾棄しながら、今理解したメイドのイカサマを思う。

そして、最後のゲームが始まった。
 
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